大阪地方裁判所 平成4年(ワ)928号 判決 1992年6月04日
大阪市西成区山王一丁目九番七号
原告
北畑實
東京都千代田区霞が関一丁目一番一号
被告
国
右代表者法務大臣
田原隆
右指定代理人
竹本健
同
中村悟
同
藤井昭夫
同
福住豊
主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
被告は、原告に対し、六万三〇〇〇円及びこれに対する平成三年一一月一二日から支払済みまでの年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 本件は、原告が、物品を購入するに際し、代金とともに支払った消費税相当分につき、被告が法律上の根拠もなく不当に利得したとして、被告に対し、その返還を求めた事案である。
二 原告は、平成三年一〇月二二日、国内において、オバタ商店(丸若商店)から中古の懐中時計一五個(以下「本件物品」と総称する。)を合計二一〇万円で購入する際、売主である同商店に対し、消費税額相当分六万三〇〇〇円を支払ったが、(1)物品税法(昭和六三年一二月三〇日法律第一〇七号による廃止前のもの。)が制定される以前に製造された本件物品には、同法が遡及的に適用することはできず、消費税法(昭和六三年一一月三〇日法律第一〇八号)についても同様にその適用は許されない、(2)本件物品は、古物営業法一条一項にいう「古物」であって、このような「古物」については、消費税を賦課するべきではない、また、古物営業法は消費税法上の条項にいう消費税を免除する旨の「その他の法律」に当たり、古物営業法上の「古物」については、消費税は免除されるべきであり、その課税は違法であると主張する。
第三判断
一 仮に、原告が、国内において本件物品を購入するに際し、売主に対し、消費税額相当分を支払い、また、この消費税額相当分について、被告が消費税として徴収し、さらに、原告の右消費税額相当分の支払と被告の右消費税徴収との間に因果関係が存在するとの前提に立ったとしても、被告による消費税の右徴収は、法律上の原因を欠くとの原告の主張(第二の二の(1)、(2))は、以下のとおり失当であって、不当利得には当たらない。
1 第二の二の(1)の主張について
消費税は、「資産の譲渡」がある以上、その対象となる物品は製造時期とは無関係に課せられるものであって、彼に本件物品が物品税法が制定される以前に製造されていたとしても、法定の要件を満たしている限り、消費税法を適用して消費税が賦課されるのは当然のことであり、法律の遡及的適用の問題は生じない。
2 第二の二の(2)の主張について
消費税法上、古物営業法一条一項にいう「古物」について消費税を賦課しない旨の規定は存しない。また、古物営業法にも、同旨の規定はなく、同法が消費税法上の条項にいう消費税を免除する旨の「その他の法律」に当たらないことは明らかであり、そのほか、古物営業法上の「古物」について消費税を免除する旨の法律の規定は存しない。さらに、消費税の性格上、明文の規定がなくとも、古物営業法上の「古物」については、消費税を賦課すべきでないと解する根拠も見い出し難い。
二 したがって、原告の請求は理由がない。
なお、原告の請求が、不法行為に基づく損害賠償を請求する趣旨を含むものであったとしても、前記のとおり、被告の消費税法に基づく消費税の徴収には何ら違法な点はなく、いずれにしても原告の請求は認められない。
(裁判長裁判官 福富昌明 裁判官 森義之 裁判官 西田隆裕)